パートナーインタビュー
AIで切り拓く!kintoneビジネスの新時代へ
前編:最新AI関連サービスのご紹介
- プロダクト
- コンサルティング
- 50-99名
- 50名以下
- 関東
2023年にChat GPTが公開されて以降、
AIは私たちの生活にとって身近なものになりつつあります。
今回はkintone × AIのサービスを先駆けてリリースされている2社のお話を伺いました。
株式会社ショーケース
SaaS事業本部
LLM Labs マネージャー
中野和俊氏
技術マネージャーとして「Associate AI Hub for kintone」などのサービス開発の責任者を担っている
kintoneと連携可能なソリューションなど自社サービスを開発販売するメーカー。
自社サービスを用いたインテグレーション事業も行う。
株式会社ゼンク
代表取締役
増田芳憲氏
2005年に株式会社ゼンクを立ち上げ自ら営業や提案なども担当している
ITシステムやソフトウェアの企画や設計、開発、保守等を実施するSIer。
近年はAI事業にも力を入れている。
INDEX.01 市場におけるAIニーズ
急激な高まりにサイボウズエコシステムで対応
2023年のChat GPTの流行以降、生成AIの導入や導入の検討は、日本を含む各国で進んでいる現状です。AIの需要は今後、国内外を問わず急激に高まると予測されています。また、日本国内においても、AI関連の需要は他社の動向を見ながら上昇する見込みであるという調査結果が出ています。
サイボウズにおいても年々AIに関する相談数は増加しています。特に2024年は相談数が急増しており、既にサイボウズに着信する問い合わせでもAIの実装や連携が必須要件と断言されるお客様も出始めています。とは言えAIで具体的な業務のイメージをお持ちの方はまだまだ少ないと感じています。
サイボウズではkintoneビジネスの基本としてエコシステム戦略を取っていますが、AIの価値提供についても(本体提供としての)コア機能に加え、エコシステムで多様なお客様のニーズにお応えしていきたいと思っています。今回はkintoneを取り巻くAI分野で先駆けてサービスを提供されている2社にお話を伺います。
INDEX.02 Associate AI Hub for kintone
kintoneのカスタマイズが自然言語で可能に
まずは各社様からAI関連サービスについてご紹介をお願いします。まずは中野さん、「Associate AI Hub for kintone」について教えてください。
ショーケース中野氏
ショーケースが提供する「Associate AI Hub for kintone」は、kintoneにおけるカスタマイズを自然言語でできる生成AI × kintoneサービスです。プログラミング知識は不要でkintoneのカスタマイズを行うことができます。
このサービスのコンセプトは、kintoneでの業務をサポートしてくれる専門家AIアシスタントです。今後6つほどの機能をリリースしていく予定ですが、ユーザー様やパートナー様と会話していく中で、まずは3つの機能を先行して開発していく予定です。
- ①JavaScript 生成:kintoneの機能にない表示や動作をさせたい時にカスタマイズするためのJavaScriptのコードの生成を行います。
- ②アプリ作成:AIに指示を出すことでkintoneアプリを自動作成します。
- ③データ生成:アプリにサンプルデータを生成します。項目名に沿ったデータをランダムにデータ登録し登録件数の指定も可能です。
想定される利用シーンを教えてください。
ショーケース中野氏
「Associate AI Hub for kintone」をご利用いただくイメージとしては、kintoneをもっと便利に使うためにカスタマイズを行いたいけれど、自分ではJavaScriptでコードを書けないので困っているというシーンを想定しています。そんなお客様が「Associate AI Hub for kintone」をご利用いただき、日本語でカスタマイズをしたい内容を伝えるだけでAIがアシストしてカスタマイズができるということを目指しています。
具体的にはどのようなことができるのでしょうか?
ショーケース中野氏
言葉だけでは中々伝わらないと思うので、今回動画を準備してきました。
右下に紫色のアイコンが出ているのでここをクリックすると「ドッグ」という機能一覧が出てきます。ここでチャットのボタンを押すことでAIに指示を出すことができるボックスが立ち上がるのでここでやりたいことを入力していきます。
今回生成しようとしているのは、kintone上にある日付フィールドが一定より古いもの、例えば締切を過ぎてしまったレコードを視覚化するために色付けをしたいといった際に行うカスタマイズを想定しています。大体20秒〜30秒程度でカスタマイズが可能です。
どういったコードが出てきたのかはドッグから確認することが可能で、人間がコードを書くことなくAIがコードを生成してくれています。
INDEX.03 AI Hawk・AI Buffalo
AI × kintoneを活用した導入事例
続いては増田さん、AI HawkとAI Buffaloのkintone連携事例を教えてください。
ゼンク増田氏
ゼンクが提供するkintoneと連携可能なAIサービスは2つです。
AI Hawk:店舗型のビジネス向け予測AI。45日先までの客数・売上をAIが予測し、食材や商品の仕入れすぎを防ぎます。
AI Buffalo:運送業・物流事業者向け予測AI。45日先までの貨物数をAIが予測し、配車や人員配置を最適化します。
今回はこの2つのサービスをご利用いただいている株式会社スタックス様の事例をご紹介します。
まずは、お客様の業務内容を教えてください。
ゼンク増田氏
こちらのお客様は金属部品の製造を行い、医療機器や通信機器を製造しているメーカーに向けて部品を提供されています。取引先様ごとに様々な部品を提供する多品種小ロットの生産を強みとされています。各協力会社から拠点を通して川崎や都内に対し製造から輸送、搬入を行っています。
どのような課題をお持ちだったのでしょうか?
ゼンク増田氏
こちらのお客様の課題として下記2点を挙げられていました。
- ①売上予測ができていない
- ②営業ルートの重複・無駄
1つ目の課題「売り上げ予測ができていない」について、どのようなお悩みがあったのでしょうか?
ゼンク増田氏
過去10年分のデータの有効活用の仕方に悩んでいらっしゃいました。そこで仮説としてどんなことができるのかを洗い出し、今回実施した「繁忙期の可視化による営業ルート最適化」やそれ以外の用途でもAIサービスが使えるのではないかということでお話を進めました。
2つ目の課題「営業ルートの重複・無駄」についても詳細を教えてください。
ゼンク増田氏
「営業ルートの重複・無駄」については、分解すると下記のようなポイントを考慮する必要があるとわかりました。
- ・顧客への納入方法
- ・営業訪問のタイミング
- ・営業ルート
- ・配送コスト
この中でも「営業ルート」については改善の余地がありそうということで、こちらの課題に対してメスを入れていくことになりました。
具体的なご提案内容を教えてください。
ゼンク増田氏
今回実際にご提案したソリューションのシステム構成図はこちらになります。
基幹システムとAIシステムのハブやUIとしてkintoneを真ん中に置き、今回のお客様用にAIのカスタマイズ(チューニング)も実施しています。そしてアウトプットとしては、総受注量に対して受注金額のトレンド予測、個社ごとの予測データを提供いたしました。
導入効果として、ビジネスインパクトはどのようなものがありましたか?
ゼンク増田氏
まず、週単位での受注増減のトレンド把握ができるようになりました。
また、営業ルートの合理化により、1ヶ月あたり約13%の燃料費削減ができました。
さらに、今後の更なる予測精度の向上により、得意先からの受注効率化と配送コストの削減でコストパフォーマンスの高い営業活動に期待ができるようになっています。
ユーザー体験の向上についてもお聞かせください。
ゼンク増田氏
はい。kintoneにて各情報を一括で閲覧することが可能になり情報によって基幹システムやExcelを確認しにいく煩わしさもなくなり、抵抗感なく利用できるようになりました。
また、UIは必要情報のみにし、視認性が良く簡潔に情報をキャッチできるようになっています。
ゼンク増田氏
こういった体験から、お客様としては今後以下のような用途でAI × kintone活用を期待されています。
- ①在庫仕入れタイミング
- ②従業員のシフト管理
- ③設備投資、資金調達などの経営判断
お客様はAI活用にどのような魅力を感じられているのでしょうか?
ゼンク増田氏
今回AIサービスを導入されたスタックスの代表の方に伺ってみました。
1点目は、納得感のある判断・決定ができることです。
システムによるアウトプットは、人間の経験や勘に基づく判断・決定と比較しても納得感があり、そのアウトプットによって動かされる担当者も受け容れがスムーズです。(勘と経験の押し付け回避)
2点目は、属人化の回避です。
従来は営業担当者の収集してきた情報に頼るのみでしたが、自社保有のデータとAIを活用する事で、収集してきた情報の補完や人間には見えない規則性を見つけ予測が可能となりました。今後は場当たり的な対応なども減少していくと思われます。
3点目は、自社保有データの価値向上です。
自社保有のデータが最新システムと結びつく事で「ただの受注データ」以上のものになりました。この経験は非常に貴重であり、今後も継続利用することでさらにブラッシュアップしていきたい、と伺っています。
お客様の今後の展開について教えてください。
ゼンク増田氏
スタックス様は今回のシステムをユーザー企業として同業他社に展開することも想定し汎用化、機能追加の検討を進めていかれる予定だそうです。ゼンクとしてもご支援しています。
中野さん、増田さん、ありがとうございました。実際の製品画面やお客様の事例をお話いただくことで、よりAIがkintoneと組み合わせてどのように活用できるのか、具体的にイメージすることができたと思います。
前編はここまでとなります。後編では、AIサービスを提供されているお二人に、kintone × AIのサービス化のきっかけやぶっちゃけkintoneとAIの相性ってどうなの?といった質問をお聞きしていきます。後編もお楽しみに!
※本記事は、パートナーミーティング2024分科会の内容をもとに執筆しております。
取材・執筆 : 佐藤 太嗣、中江 麻未
取材日 : 2024年6月14日
株式会社ショーケース
2022年サイボウズパートナーに加入。「おもてなしテクノロジーで人を幸せに」をコアバリューとして「おもてなし Suite DX」といったkintoneと連携可能なフォームをノーコードで設計できるForm Creatorやkintoneのデータをマイページの形式で外部にウェブページとして公開できるViewerなどのSaaS事業を展開している。
近年ではAI事業を進める組織を作り2023年に「Associate AI Hub for kintone」をリリースするなどAI事業に力を入れている。
株式会社ゼンク
2017年サイボウズパートナーに加入。ホームページの企画・作成・運用に関する業務やITシステムの企画・設計・構築・導入・運用に関する業務 / ソフトウェアの設計・開発を中心に事業を展開している。
また、2022年に株式会社ROX社よりAI事業を譲受し近年ではAI関連事業(データ分析、需要予測AI開発、AI連携、AI活用、AI導入支援など)にも力を入れ、既存事業との相乗効果を生み出す取り組みを実施している。
代表はOSSコンソーシアムの活動をライフワークにしている。