パートナーインタビュー
新規サービス開発の新手法!ノーコードツール 「kintone」を使って自社プロダクトを立ち上げるノウハウを徹底解説
- コンサルティング
- 四国
- 50名以下
kintoneベースで開発された、
法律業界向けSaaS「クラウドバランス」を
提供するFISTBUMP社。
SaaSと言えばフルスクラッチで
開発するのが一般常識である中、
あえてkintone上で開発することにした
その理由とは?
開発のストーリーについてお聞きしました。
株式会社FISTBUMP
代表取締役
河本尚彦氏
法律事務所向け事件管理サービス・クラウド事件カルテ「Cloud Balance(クラウドバランス)」を提供。「Cloud Balance」は、法律事務所で発生する業務をサポートし、事件やタスクを管理するクラウドサービス。
INDEX.01 登壇者・製品紹介
リリースして2年半で
累計ライセンス数550件以上の「クラウドバランス」
リリースして2年半年ほど経ちますが、現在のお客様の数で言うとどれくらいになってきましたでしょうか?
河本氏
現在、累計ライセンス数550件社以上(2024年6月末時点)の日本全国の弁護士事務所様にご導入していただいております。
また、ありがたいことに毎月の引き合いは昨対比と比較しても、数倍程度増えておりまして、今後はますます多くの弁護士事務所様のDXに貢献できることを期待しています。
代表取締役 河本尚彦氏
岡山県出身。2016年8月にFISTBUMPを設立。法律事務所向けのシステム開発着手。2022年にかわさき起業家オーディション アイデア・シーズ賞受賞、徳島ニュービジネス支援賞DXプラン賞受賞、岡山イノベーションアワードファイナリスト。2023年にCYBOZU AWARD2023エリア賞受賞、2024年にCybozu Partner Network Report セールス部門で一つ星を獲得。
好調なペースで伸びてきているのですね。簡単にFISTBUMPさんがkintoneを使って開発されているSaaS「クラウドバランス」について教えてください。
河本氏
弊社は法律業界に特化したクラウドバランスというSaaSを提供しています。SaaSといってもkintone上で構築しており、kintoneのカスタマイズ性を活かした「セミオーダー」型で提供しているのが特長です。
弁護士事務所向けのスケジューラー、事務所内での電話内容の共有機能、預かった事件の進捗管理、法律業界特有のコンフリクトチェック機能などを提供しています。このように法律業界に必要な機能を1つにまとめてkintoneで提供しているのがクラウドバランスです。
INDEX.02 開発背景
あえてkintoneを用いて、新サービス開発を進めた理由とは?
kintone は、エンドユーザーが使うサービスのイメージが強いと思うのですが、他のクラウド基盤サービスを開発する手段もありながらも、なぜあえてkintoneを使ってサービス開発をしたのでしょうか?
河本氏
まずなんと言っても、お客様からの要件の吸い上げから開発までのスピードが速いのが特徴です。そして、ノーコードでアプリ開発ができるため、お客さんと仮説検証をしながら、作ってはアイデアを却下し作り直すようなMVP開発を非常にスムーズに進めることができます。
“kintoneはプログラミングの知識がなくてもノーコードで、業務のシステム化や効率化を実現するアプリがつくれるクラウドサービス。従来は、現場部門のエンドユーザーが業務改善を行うDXツールとして利用する方法が一般的ではあったが、河本氏によると他にもエンジニアがSaaSを開発する際のツールとしても、活用の余地があるという。”
河本氏
なおかつ、ビジネス人材だけでも、1人でアジャイル開発ができるのが特徴です。これが他のクラウドインフラサービスだと、新しい機能を作るにしても技術的な知見が必要なのですが、kintoneを使えば、専門知識がなくとも業務知識があれば最短で作れるのが特徴です。
kintoneを用いて開発する上で、kintoneならではのメリットについても教えていただけますでしょうか?
河本氏
法律業界では事務所ごとに得意な案件、クライアントごとに業務フローが異なり、現場で迅速なカスタマイズ性が求められます。そのため、機能が完全に固められた従来のパッケージ型ソフトウェアはなかなか参入しづらい構造になっています。そこで、kintoneのカスタマイズの容易さを生かしつつ、ベースとなるものをあらかじめご提供できれば、そんな法律業界のDXも進められるのではないかと考えました。
また、kintoneやそのプラグインなどすでにある機能やサービスを使えば、自社で開発をしなくても機能をリリースすることができます。また柔軟に修正・カスタマイズができるため、個別要望を聞きやすいという点も、kintoneを活用するメリットだと思います。
開発面のみならず提案時にお客様の機能要望に対して柔軟に応えやすいという点もkintoneを活用するメリットになると思います。
INDEX.03 プロダクト開発の流れ
kintoneならではの開発プロセス
ここからkintone活用ならではの製品開発プロセスにも触れていきたいと思います。まず、SaaSのターゲット・領域選定という観点の質問です。そもそもなぜ業界未経験から弁護士業界に参入したのでしょうか?
河本氏
弁護士業界に特化したSaaSを開発した理由としては、課題の深さと選定市場としてのポテンシャルという2点が大きな要因です。
まず1点目の課題の深さについてですが、クラウドバランスを提供する以前ですと、弁護士業界に限定せずに様々な業界のお客様にDX化の支援をしてきました。ただ、そのなかでも法律事務所の課題が非常に根深いものがありました。お客様にヒアリングすると、法律業界でDXが進まない理由は取り扱っている分野が多岐にわたり、処理方法が事務所によっても異なるため、多くの事務所に完全にフィットする一般的なシステムを作りづらい点にあるとわかってきました。
2点目の市場のポテンシャルで言うと、正直なところSFAなど汎用的な業務課題を解決するソリューションと比較すると、そこまで市場は大きくないのですが、その分、競合企業が多くないブルーオーシャンであるということがあります。また、後ほど話にもあげるのですが、弁護士業界という特殊な業界の特殊の業務を理解するハードルがあるため、一定の参入障壁があるところも目をつけた理由でした。
おおよその想定顧客や市場が決まってくると、一般的な開発プロセスでは、ニーズの調査・仮説検証になってくると思うのですが、そのあたりはどのように進めていったのでしょうか?
河本氏
大きく分けると、テストマーケティングを行い、kintoneで開発、サービスとして提供という3ステップで立ち上げました。テストマーケティングでは、ターゲットとなるお客様が困っていることを徹底的にヒアリングします。その要望を解決できる機能をkintoneで開発し、確認してもらうことを繰り返します。
河本氏
この繰り返しを複数のお客様と重ねていくと「その業界における一般的な業務課題」が徐々に見えてきます。当社の場合は法律業界のお客様だけで1900件のヒアリングと機能のテスト開発を行いました。
仮説検証やヒアリングに協力してくれる企業はどのように見つけたのでしょうか?
河本氏
仮説検証やヒアリングにご協力していただく企業は、普段のkintone案件の中で接点を持った企業の中で、協力的な企業を数社見つけていきました。事業会社の方であれば、自社の既存事業で接点を持っているお客さんや取引先を頼りに仮説生成や検証を進めていけると良さそうです。
INDEX.04 課題と解決策
ゼロからのプロダクト開発で苦労した点
ここまで非常に順風満帆にプロダクト立ち上げをされているように思えますが、ゼロからのプロダクト開発苦労されたところはどういったところでしょうか?
河本氏
そうですね。実際はめちゃくちゃ苦労したところは開発とセールスそれぞれあります。まず開発工程の話で言うと、機能を標準化させていくことに非常に苦労しました。お客様へのヒアリングをしていく中で色々とご要望をいただくのですが、一つ一つの意見が個別の要望なのか、業界共通の要望なのかの判断に苦労しました。
その辺りの壁は、まさに先ほどおっしゃっていただいた仮説検証やヒアリングに協力していただける企業を見つけることで乗り切ったということでしたよね
河本氏
はい、そうです。そのほかにも業界特有の専門用語や業務を理解するのにもそれなりに時間がかかりました。当社は弁護士業界に課題解決に特化したソリューションということで、当然、弁護士業界の業務を理解することが必須となるわけですが、法律の専門家ではない自分がそういった用語を理解した上で、要件をkintoneで再現していく難しさを感じました。
今おっしゃっていだいた機能開発の難しさはどのように乗り越えていったのでしょうか?
河本氏
これはずばり、弁護士のお客様の案件対応をしていく中で、地道に業務の理解度を上げていったことで解消していきました。我々は非常にこの課題の解決に苦労をしましたが、これから自社が得意する事業分野において、クラウドサービスの立ち上げをする方はこのあたりで躓かずにすむかもしれません。
セールス面での壁はいかがでしょうか?
河本氏
お客さんである導入事務所との信頼関係を一つ一つ丁寧にえっていくことに初めは苦労しました。これについては、魔法の杖はなく1件1件、丁寧な提案をしていくこと、そこの導入先事務所から紹介をもらって徐々に案件が増やすことや、業界におけるプレゼンスをあげていくのが良いと思います。
INDEX.05 まとめ
kintoneを使って新規サービスを立ち上げたい方へ
最後に一言お願いいたします。
河本氏
今後、法律業界向けのパッケージ以外の分野においても、開発支援をしていこうと思っています。もし、事業会社の方でクラウドサービスを新規に立ち上げてきたいと思われる方がいらっしゃいましたら、ぜひご相談いただきたいです。
サイボウズではkintoneを使って新しくクラウドサービスの立ち上げをしていく企業向けにオフィスアワーを開催しております。ご興味がある事業会社のご担当者様は、こちらから検討中の企画内容を記載の上、お問い合わせくださいませ。
※本記事は、パートナーミーティング2024分科会の内容をもとに執筆しております。
取材・執筆 : 二ノ宮 将吾
取材日 : 2024年6月14日